私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

「夏!」

「大丈夫…下がってろ」

 秋奈の肩を掴む手を強引に引きはがして、逆に押し倒す。

 秋奈を傷つけようとした。

 あんなに強い力で、怪我が残るような力で…。

「ダメ!!」

 同じ痛みを味あわせてやる。

 どんな力で秋奈に向かったか、思い知らせてッ…。

「夏樹」

 振りかざした拳が止められる。

 大した力じゃない。振り切ろうと思えば振り切れる。

 なのに、俺の体は金縛りにでもあったかのように動けなくなった。

「秋の声が聞こえないのか。ダメだ。押さえろ」

「…瞬桜」

「秋を泣かせんな」

 手が離れた途端、体は自由になったけど、もう熱は収まっていた。

 秋奈に殴りかかって、俺が押さえつけた奴は完全に戦意を失っていて、その上から退いた。
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