私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

 今にも夏樹に掴みかかりそうな女は、随分ひどい顔をしていた。

 それでも、夏樹は睨んだまま動かない。

 多分、殴られたとしても…。

 静かな時が流れる。教室のドアが開く音のも響くくらいに。

「何してるの?」

「何って、今さら仲裁…ッ!?」

 さっと顔から血が引くって、こういうことを言うと思う。

 そう思うくらい、青白い顔をした女は、教室のドアに手をつけたままこちらを見つめている秋奈を見た。

「あ、秋奈ちゃんこれは…」

「足退けて」

「こ、これは違くて」

「退けて」

 有無を言わせない秋奈の言葉に、ようやく手の上に乗っていた足が離れる。

 あ、やっぱり携帯割れてる。

 …最悪。
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