私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

「六花、携帯じゃないでしょ今は」

「…痛い」

「当たり前でしょ?血出てるんだから」

 怪我した手をそっとハンカチで包んだ秋奈は、いつも身につけてるウエストポーチから、いろいろ取り出した。

 いつの間にか教室にいた瞬桜が濡らしたハンカチを持ってきて、傷を拭いてくれた。

「秋奈ちゃん!これは…」

「黙って。うるさい」

 いつもの秋奈からは想像できない冷たい声。

 女は黙って、ただ呆然と秋奈を見つめてる。

 真剣な顔で傷を手当てしてくれた秋奈は、最後に絆創膏の上から傷をさすった。

「あれ、六花ほっぺ赤い…」

「…叩かれた」

「え?…保健室で氷貰ってくる?」

「いい」

 保健室の先生はなんか気持ち悪いから嫌い。

 みんなそう言ってる。

 秋奈は少し納得してない顔で立ち上がって、女に向き直った。
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