私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

 それからはまた何となく黙って、TVの音だけがリビングに響く。

 父ちゃんが先に食べ終わって、ビールを片手にTVの前に移動していく。

 どうしよう。姉ちゃんに大会のこと言わないといけないのに…。

 あ、そうだ!

「母ちゃん、日曜日弁当」

「え?あぁ、大会だったわね」

「うん」

 姉ちゃん気付け…!

「春馬、頑張って来いよ」

「分かってる。絶対、優勝するし」

「あら、頼もしいわね。お父さんとお母さん行けないけど、頑張って来てね」

「分かってる」

 姉ちゃんは…思いっきり下向いてた!?

 何でだ。視線くらい向けてくれても…!

「ごちそうさま」

「秋奈、春馬の大会、行かないの?」

 母ちゃんナイス!

 姉ちゃんは台所に行きかけた足を止めて、振り返るとチラッと俺を見て、母ちゃんに視線を戻した。

「…行かない」

 え…?

 姉ちゃんはそのまま茶碗を持って台所に入って、すぐに戻って来る。

 そのままリビングを出て行く姉ちゃんをただ見送ることしか出来なかった。
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