私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
すぐに湿布が貼られて、その上から氷で冷やされる。
でも、亮佑の表情は歪んだままだ。
「出れそうか?」
「分かんねぇ。でも、これじゃ無理だ…」
亮佑は悔しそうにうつむき、顔を上げない。
そして、一気に空気が重くなった。
亮佑がいなくて勝てる相手じゃない。
でも、負傷した亮佑が無理に出てそれで結果を残せるほど甘い相手でもない。
どうする…。控えを出すか?でも、亮佑のほかに先鋒に出れる奴なんて…。
もうすぐ招集がかかる。
「…誰か、携帯…」
「え?」
「誰か、携帯貸してください!姉ちゃん呼び戻します!」
あがくだけあがく。姉ちゃんなら1試合だけでも何とかしてくれるかもしれない。
すぐに携帯を貸してくれた2年のお母さんにお礼を言って、電話をかける。
3回コールが鳴っても出ない。
マナーモードにしたままなのか?5回目のコールが鳴って、留守番電話につながりかかった瞬間、不意に途切れた。
『もしもし…?』
「姉ちゃん!?すぐに戻ってきて!亮佑が捻挫して動けない!」
戸惑った声が返ってきて、なぜか瞬桜さんに代わって、すぐに戻ると言い残して電話が切れた。