私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

 開始の位置からまた始まる。

 息を深く吸って、一気に吐く。

 落ち着け。焦るな。集中しろ、一瞬のすきも見逃すな。

 周囲の雑音から切り離される。

 竹刀のわずかな動きから相手の力の加え方がわかる。

 竹刀が固まった。来る!

「めーん!!!」

 ドンッと音を立てて踏み込まれたと同時に1歩半下がる。

 竹刀が顔面のギリギリをかすめていく。

「っめーん!!!」

 相手に逃げられる前に詰め寄って、竹刀を振り下ろす。

 その瞬間、周囲の音が返ってきて、ずっと詰めていた息を吐いた。

 竹刀を突き合わせ、1度腰を落として竹刀を腰に戻して立ち上がる。

 お互いを見据えたまま試合場を出る。

 久々にこんな緊張したかも…。
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