私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
「夏、気付いてる?私がこうやって遊んだ後、一緒に問題解くとね、夏ほとんど間違えないの」
「え?」
「だから、おまじない。大丈夫だよ。夏はちゃんとできるから」
目を丸くしてぽかんとしてる夏に笑いかけて、急いで教室まで戻る。
「秋、夏樹に甘すぎるんじゃないか」
「え?でも夏さ、自分はどうせできないみたいに思ってるから…」
階段を登りきったところで振り返ると、瞬は複雑そうな顔をしていて、思わず足を止める。
「…お前、その優しさ、あんまりやると逆に夏樹を苦しめることになるぞ」
瞬は視線をそらして、そのまま私の隣を通って先に教室に向かってしまう。
夏を苦しめる?
優しくしたらダメなの?おせっかいなの?だって、夏は…。
『俺なんか、どこでのたれ死んでも誰も困らない』
あんな顔、もう見たくない。
傷つくことを恐れずに向かっていく夏をもう、私は、見たくないだけなの。