私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
道場にたどり着くと、丁度走りに行くところだったのか、剣道部にしては珍しいジャージ姿だ。
「あぁ、秋奈ちゃんお疲れ」
くまさ…部長さんが声をかけてくれる。
その手にいつも巻いてたサポーターがなくなってる。
「お疲れ様です。手の調子、どうですか?」
「あぁ、テスト期間ですっかり良くなったよ」
やっぱり休めば治ったのか…。
よかったですねと言葉は返してるけど、多分顔は引きつってる。
まぁ、部長さんも本調子に戻ったのならよかった。
「あぁ、瞬桜の奴道場で待ってるよ」
「アップも先にさっさと済ませやがってさぁ」
げ、瞬がいないと思ったらそういうこと…。
愚痴を吐く同級生の子には申し訳ないけど、もう全然耳に入ってない。
いきなり瞬と2人きりってきつい。
「じゃ、秋奈ちゃんは中に入っててな」
「は、はい。外周頑張ってください」
部長さんを先頭に走り去っていく剣道部男子。
道場の中を少しだけ覗くと、女子の姿はない。
確か女子ってテスト後はミーティングだから練習ないんだっけ。逃げ道がない…。