私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

 胸の奥底で眠っていたものが目を覚ます。

 酷く美しく、恐ろしいそれは、にやりと、口角を上げ、私に手を伸ばす。

『秋奈、喚びな』

 このままじゃ、死んじまうぞ。

 迫る刀身。バランスを崩した体。終わりだと敵の顔が歪む。

―修羅

 無意識のうちに口が、心が喚ぶ。その瞬間、世界が茜色に染まる。

 沈んでいこうとした意識を踏み留めて、迫る刀身に手を向ける。

『なんだ、もっと来いよ』

 楽しそうな声。誘惑する甘い声。

 でも、落ちない。それ以上は、こちらには行けない。

 もう、ここはあなたの生きた時代じゃない。だから、行けない。

『っはは。相変わらずのアマちゃんめ。だが、いいぜ。俺に縋れ、お前は―』

 俺に名付けた唯一の剣士だ。
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