私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
「どうしたんすか?秋奈さんが俺んとこ来るなんて」
「新しい子が増えるだけ増えて、ちゃんと話してないなぁって思って。だから、尾木くんが第1号」
「なんですかそれ」
少し吹き出して笑う。
そこに罪悪感なんか全然なくて、ばれるんじゃないかって警戒心はあるのに、ものすごく自然体だった。
まるで、今までもやったことがあるかのような態度。
そんな尾木くんに合わせて笑う。
「…あのね、最近商店街で万引きがあるんだって」
「万引き…すか?」
「うん。商店街の人たちもすごく困ってる。結構大きな被害出てるお店もあるんだ」
「…どうして、その話を俺に?」
少し警戒心が増す。
あぁ、言ってくれないんだ。それがすぐにわかる。
言う気はない。ばれてることも知らないから。
だから、絶対に言わないんだね。
尾木くんに笑いかけて、だってさと声を出す。
「今日、私と店番だよ?万引き犯出たら、尾木くんが走って捕まえるんだよ」
「え…マジっすか」
「マジで!私そんなに足速くないもん。だから、お願いね?」
「…分かりました。秋奈さんの分も走りますよ」
「ありがと!…じゃあ、行こっか」
立ち上がって、尾木くんに手を差し出す。
素直に手を出してくれた尾木くんを思いっきり引っ張って立ち上がらせる。
先に歩き出した尾木くんを見つめる。
どうか、改心して…。もう、あんなことしないで。願うけど、多分届かない。
さりげなくやってきた瞬に背を押されて歩き出した。