私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
「鍵貰うだけだから、尾木さんどこいる?邪魔しないタイミングでもらうから」
「…あぁ、えっと、ちょっと尾木くん外してるんだ。春ちゃん、お店で待っててくれる?なるべくすぐ届けるからさ」
「…わかった。亮祐、暇なら寄ってくか?」
「おぉ、寄る寄る!チョコばあちゃんのとこでお菓子買ってきていいか?」
「お~」
「尾木!お前も行くぞ!」
「え、で、でも僕お金が…」
「大丈夫だって、アイスくらいおごってやるからな!」
亮祐くんが尾木くんの弟を強引に連れて行く。
そのあとに続こうとした春馬を、袖を引っ張って引き留める。
「なに?」
「尾木くんって、家大変だったりする?」
「…あんま言わないけど、多分そうだと思う。竹刀とか全部お下がりだし、電車台かかるときとか来ないし」
「…そっか」
尾木くんはもしかして家のために…?
「あ、秋奈さんなんですか!?」
「え?そうだぞ」
「マジですか!亮祐先輩、ちょっと離してください!」
弟くんが亮祐くんを振り切ってこっちに走ってくる。
私の前で止まった弟くんは、いきなり頭を下げた。