私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

「あれ、永井くん?」

「…お前も?」

「おじいちゃん言ってた。自分が使わせてもらってる道場を粗末にするなって」

「…だな」

 朝最初に顔を合わすのも宮田だ。

 一緒に道場を隅々まで水拭きして、わざわざ一旦教室に戻って、今来たみたいな風に繕うのも一緒。

 帰るふりして全員居なくなった道場をまた水拭きして帰るのも、一緒だった。

 本気で剣道に向き合ってる。そんな宮田がいることで、自然と士気が上がって、いつしか部活をやめようとか考えることもなくなった。

 そんな風だったのに、俺は秋のSOSに全く気付けなかった。
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