私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

「ッ…あ」

「何寝てんだよ。早く立て!!」

 頭を押さえて倒れ込む宮田に何の情けもなく無茶な要求をする先輩。

 そんな状況を、誰も助けようとしない。

 同級の奴らでさえ、そんな宮田を見て笑ってる。

 …なんで、こんなことするんだよ。

「永井!」

 仲裁に入ろうとした俺の肩を先輩が掴む。

 振り返りざまに思わず睨むと、先輩の顔はなぜかこの状況をどこか楽しむような目をしていてぞっとする。

「なんで止めるんすか…」

「…女子のケンカに顔突っ込むなよ。俺たちには関係ないだろ?」

「でも!!」

「何、永井。宮田に気があんの?まぁ、あの顔だしなぁ」

「んな…」

「いいのか、永井。顧問、色恋沙汰いかにも嫌ってるぞ。お前試合出してもらえなくなるかもな」

 バカなことに、試合に出れないことを俺は恐れてしまった。

 試合に出させてもらえなくなることを恐れて、さっきまで確かに止めると思っていた頭はどこかに行ってしまった。
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