私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
宮田は怖がってるような、でも、過信でなければいいけど、少し嬉しそうな目をしてた。
「プリント、持ってきた」
「ありがとう…」
少しだけ手を出してくる宮田。
ドアのチェーンを外す気も、これ以上俺と話す意思もない。それがはっきり分かる行動だった。
どこかで落胆している自分に気づく。
俺なら、またあの笑顔で笑ってくれるんじゃないかって思ってたから、それを覆されたから。
来るのが遅かったのかもしれない。
もっと早く、あいつらが悪口なんか吐く前に来ればよかったのかもしれない。
宮田は完全に俺をもう自分のスペースに入れる気はないんだ。
わずかな隙間から茶封筒を渡す。
偶然手が当たるとか、そんなことはなくて、むしろ当たらないように封筒の隅を持たれてしまった。
俺の手から離れて行った封筒は家の中に入って、宮田は頭をまた下げるとそのわずかな隙間を閉めてしまった。
なんで、また来るからとか言えなかったんだろう…。
名残惜しくドアを見つめていたけど、開くわけなくて、ドアに背を向けて歩き出した。