私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
それから、あいつらに押し付けられるたびに来る。
宮田は俺が来た時だけ顔を出すらしい。
だけど、あのチェーンの付いたドア越しのままだ。
プリント持ってきた。
ありがとう。
ただそれだけの会話しか成立しない。
それ以上の言葉をかけることもなかったし、宮田からも出すことはなかった。
日が経つにつれて、あいつらはもう宮田の家に行かなくなって、宮田のプリントは俺が直接担任から渡されるようになった。
2年生も半分を過ぎた頃、あっという間に閉じていくドアを初めて止めた。
「なぁ、ちょっと話さないか?」
「…」
驚いたように目を見開いた宮田は、戸惑いながらもドアを開けたまま俺を見てた。
「宮田、お前、なんか怖いことがあるのか?」
「…なんで?」
初めて、ありがとう以外の言葉を宮田は話した。
それが少し嬉しくて、でも自分が何でこんなこと言ったのかよく分からなかった。
「…何となくだけど」
「…怖い、かもね」
宮田は苦笑交じりにそう言って、ドアを閉めてしまった。