私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
「ちょっと!うちの子に何してくれてんの!!」
何の前触れもなく響いた怒鳴り声。
振り返ると、大泣きしてる子どもの前に紀仁と大貴がいて、そこへ母親が駆け寄って行ってた。
嫌な予感。
というか、ダメだこれは…。
泣いてた子どもは母親が現れたからか、怒鳴り声にびっくりして泣き止んでる。
紀仁が立ち上がって、母親に向かう。
「お子さんが泣いていたんで、声をかけさせてもらってました」
「は?何、誘拐しようとしてたわけ?あぁ、こわ。何よこの商店街!!」
予感的中。
よくよく見たらあんまり関わっちゃダメだよって秋奈がブラックリストに挙げる客じゃねぇか…。
紀仁の顔が流石に引きつる。大貴なんかさっきから黙りっぱなしだ。
「すみませんでした。俺たちはこれで…」
「は?逃がすわけないでしょ!?誰か!警察呼んで!!誘拐犯よ!!」
「はぁ!?」
おいおいマジかよ…。
そしてなんで紀仁謝ってるんだよ!
ああいうのには非もないのに謝ったらまずいって口酸っぱく言われてたのに!!
周りのお客さんたちも何事かと様子を見てる。これはやばい…。