私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
「瞬…」
「ん?」
「いなくならないよね」
「いなくなるわけないだろ。夢でも見たか?」
「…分かんない。でも、1人になったら、急に怖くなった…」
「そっか、ごめんな。戻ってくるの遅かったもんな」
ひたすら頭を撫でて、秋が落ち着くのを待つ。
待って待って、気づいたら秋は眠っていて、なんか気が抜けた。
「…男に縋ったまま寝るなよ、バカ」
ベッドに寝かすと、秋の手が俺の浴衣を掴んでいて、思わずため息をつく。
一晩忍耐力試せってか?
試合前にとんだ試練を置いてくれるな。こいつは…。
一応離すか試したけど、やっぱダメで、仕方なく横に寝ころんだ。
やば、寝れるか分からないぞこれは…。
同室とか初めてで、もちろん並んで寝たこともバスの中くらいしかなくて、こんなふうに寝たことなんか1回もない。
「秋…」
いつか、堂々とこんなふうにできるときはやってくるんだろうか。
そっと抱きしめれば、なんかすぐ壊れそうで怖くて、手だけ握っといた。
寝るまでにはしばらく時間がかかったけど、なんか幸せだった。