私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

「秋奈、花火いいのか?」

「え?花火上がるの?」

「隣の市のだけどよ、今年は被ってんだよ」

「そうなんだ!」

 それは知らなかった…。

 どこで見えるかなって考えてる間に周りの人が空を指さしてたから見ると、結構近くで上がってるのが見えた。

 その場で立ち止まって見上げると、よく見えてなんか得した気分。

「あ、ハートだ!」

「へぇ、結構こってんだな」

「きれい」

「あ、今度はニコちゃんだ!ね、夏」

「え?…あぁ、ごめん見てなかった」

「…夏?」

 気のせいかな、今夏ちょっと怖い顔してた。

 花火に視線を戻したけど、時々夏を見ると、その目は花火じゃなくて、路地裏に向いてるみたいだった。
< 366 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop