私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
更衣室から戻ってきた瞬は体操着で、その手には濡れた雑巾もある。
そうして道場の隅から隅まで四つ這いになってぞうきん掛けをする瞬。
こんなの見せられたら完全に拒否なんかできないじゃんか。
「秋…秋?」
「ん?」
「ちょっとどけ。そこ拭けない」
そう言いながら瞬が指すのは、私が座っているところで、いつの間にか他の場所は拭き終えたみたいだ。
その場所からずるずると移動すると、瞬は私の座っていた場所を拭いて立ち上がった。
「洗ってくるから」
そっけない言葉を残して瞬は一旦道場を出て行く。
戻ってきたときにはどの手に雑巾はなくて、代わりに握っている物は竹刀だった。