私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
俺より頭半分ほど背の低い秋は、笑いながら一緒に自転車置き場に向かってる。
そんな秋の笑顔を見て、俺は安心する。
こいつは、1回この笑顔を失っているから…。
「瞬、日曜日…さ」
「俺も行くから心配すんな」
たかが弟の大会を見に行くだけ。
それだけのはずなのに、秋は心底ほっとしたような息を吐いて、スポーツバックを掴んでいた手は、俺の腕を掴んできゅっと抱きついてきた。
秋の弟の春馬はなぜか反抗期の対象が親ではなく、姉である秋に向いた。
だから、家では暴言の嵐らしい。
そんな春馬に遠慮して、秋は随分肩身狭そうに家では部屋にこもっていることが多い。
でも、春馬も不器用でバカだからな…。
素直になれば秋がこんなに怖がることもないのに。
「…大会…行かない方がいいのかな…」
急に弱気になった秋は、うつむいて顔を上げない。
行かない方がいいのかなと言いつつも、本当はあまり行きたくなさそうだった。