私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
普段はバカみたいに元気で、年上にも怖け気ず意見をはっきり言える秋。
でも、あのときから、秋が自分らしくいられる時間にはタイムリミットがあるようになった。
急にぼんやりしたり、返事をしなくなったりした時は要注意だ。
すぐにみんなから引き離して休ませなければ壊れてしまうかもしれない。
その弱さを秋が見せるのは俺と秋の両親の前だけ。
逆に言えば、その状況になれば秋のスイッチは切れやすい。
「秋、春馬のこと嫌いか?」
「…ううん」
「なら、大丈夫だ。春馬は今気が立ちやすい時期なんだよ」
あまり納得してなさそうな秋は、歪んだ笑みを浮かべていた。
やべ、限界だったらしい。
周囲に誰もいないことをさっと確認して、自転車にスポーツバックを投げ入れると、秋の体を引き寄せて抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫」
細かく震えている秋を抱きしめて、頭を撫でてやる。
そっと服を掴んできた秋に苦笑する。
しばらくそのままで、秋が落ち着くのを待った。