太陽みたいな人でした。
秘密
「亜子さん、ちょっといい?」
突然の出来事に戸惑う。
いつも通りにしたらいいのか、断って帰るべきかどれが正解かわからない。
いつも通りにして『もしかして』の続きが男怖くなった?とかだったらもう終わりだ。
だったら、断って帰る?
いや、今断ってもきっといずれバレるだろう。
それならどうしたらいいの…。
「亜子さん?」
もう既に挙動不審だったかもしれない。
「えっと…何でですか?」
出た答えはこれだった。
どう見ても嫌そう。
「少し亜子さんと話がしたいんだけど無理なの?」
あ、ひさびさの悪魔。
なんか岩淵先生の嘘の顔よりこっちの方が落ち着く。
前は悪魔が出た瞬間びくびくしてしょうがなかったのに、今では素の先生を見れるのが嬉しいと思っている。
「…。」
ずっと黙っている私を見かねてか、岩淵先生はため息をついた。
「やっぱりいーや。話す気なくしたから帰っていいよ。それじゃあね。」
「…さよなら。」
そう。これでいい。バレなくてすんだ。それなのに私は先生に呆れられたような気がして胸が傷んだ。
ひとりとぼとぼ帰る私は何故か後悔していた。

「あれ?亜子ちゃんだよね?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「あってるよね!あれ?違う?」
今日はとことん最悪な日だ。
「…ふみくん。」
「あ!やっぱり亜子ちゃんか!元気してた?!ってまだ2日しかたってないけどさ 笑」
元気してた?何言ってるの?
「…元気なわけないじゃん。誰のせいでこんな目にあってると思ってるの?!」
ふみくんはすごく驚いた表情をしてる。
そして
「何のことを言ってるの?」
と笑った。
「…え。何も悪気がないの?え、悪いと思ってないの?あんなことしておいて意味わかんない。気持ち悪い!!」
「は?え?亜子ちゃん何言ってんの?土曜はたこパと飲みしただけでしょ?」
…そっか。なんだ。気にしてたのはじぶんだけだったんだ。
「…ふみくん覚えてないんだね。ふみくん、私が寝てる間に色んな所触ったり、気持ち悪いことしたんだよ。」
「…え?」
ふみくんは本当に覚えないみたい。
「…あんなことしておいてなんで覚えてないの?!私は…私は、あんたのせいで男が気持ち悪くて、怖くて…なのにあんたは忘れてる?お酒のせい?何それ…何なのよ!もう…。」
「…っ…ごめん。本当に覚えてないんだ。今初めて知ったくらいで…。本当にごめん。でも、俺は…」
ふみくんの手が私の腕に触れそうになる。
嫌だ。触んないで…!
…あれ?腕に何も触れない。
不思議に思い、そっと目を開ける。
そこには…
「俺の生徒に変なことしないでいただけますか?」
岩淵先生が立っていた。
なんでこの人いるの?え?付けて来てたの?
「…え、ストーカー。」
岩淵先生って実はストーカーなりやすいタイプなのかなとか思った。
「…亜子さん、あなたは馬鹿なんですか?」
そういい、ひとつのストラップを見せてきた。
「あ!それ私の!あれ?カバンについてると思ってた。」
「…はぁ。この彼には散々酷いって言ってるのに…亜子さんも酷いですねー。」
そう言った先生はいかにも悪魔のような笑みを浮かべていた。
え、怖。
「おい、あんた突然出てきて誰だよ。」
あ、一瞬ふみくんのことを忘れていた。
「さっきから亜子さんのこと生徒って言ってるの聞いてませんでしたか?あなたも亜子さんと同レベルですね。」
なんかさり気に嫌味言われた気がする。
「そうじゃねぇよ!教師がわざわざ亜子さん助けるってことは教師以外にもなんかあるんじゃないかってことを言ってるんだよ!!」
怒っているふみくんは怖かった。
最初の優しいふみくんはどこに行っちゃったんだろ。
楽しく一緒に話していた時のことを考えると鼻のあたりがツンとした。
「…教師が生徒を助けてはいけないっていうんですか?それよりも男友達が女の子の寝込みを襲うことの方が可笑しいんじゃないですか?」
「…っ」
「それとも可笑しいと思わないくらいに頭がいかれてしまっているんですかね。」
「くそっ…お前さっきから邪魔なんだよ!!」
そう言って先生を突き飛ばす。
あ。これはやばい。
先生はニコッと笑い、ふみくんの耳元で何かを言った。すると、
「亜子ちゃん!後でちゃんと話すから、出直させて!!」
そう言うとふみくんは顔を強張らせ、足早にどこかへ行ってしまった。
「…岩淵先生。何言ったんですか?」
「知りたいですか^^?」
先生は甘いマスクを被ってる。
でも、言っていることは
「あなたの学校には私の知り合いもいるんです。特にあなたは女は取っ替え引っ替え、素行も悪いということで目立つ生徒ですし、あなたのことは結構知っているつもりですよ?バラしましょうか?って言ったんです。あ、うっかりバラしてしまいました^^」
やっぱり悪魔でした。
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