初恋シリーズ
ギュッと目をつぶって息を飲んだ。


怒鳴られるのを覚悟して肩を縮こませる。


「なんで?」


突き出し手の手首をつかまれて上に持ち上げられた。


私は少し背伸びをする。


先輩は見つめ合っているのに一向に答えない私に呆れた顔ひとつしない。


諦めた私はもう片方の手の甲で顔半分を隠してそっぽを向いた。


「...困るから...です。」


自分でも聞き取りづらい声だった。


先輩の耳には雪の音に混じって聞こえていない。


「先輩が...困るから...。」


出だし以外はさっきとあまり変わらない。


聞き取れたかどうか先輩の顔をちらっと見ると頭突きをされた。


じんわりと痛みが広がる。


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