初恋シリーズ
「あのな...困るか困らないかは俺が決めることだし...

いや、そりゃね。びっくりはしたけどさ。」


先輩がおでこをつけたまま首を振った。


「嫌じゃないの?だって俺だよ?」


『先輩だからいいんです。』の一言が言えない。


代わりに顔を隠していた手で先輩の袖の裾を引いた。


先輩のおでこが離れていった。


痛みがなくて寂しいなんておかしな話だ。


「先生呼びに行くか。」


先輩が手を打った。


魔法はとけるのが早いと相場が決まっている。


先輩の前をとぼとぼと歩いた。


校舎はほんの少し暖かった。


それが私を余計に惨めにさせる。


「なあ。」


階段の影のところで振り返った。


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