初恋シリーズ
思っていたより顔が近い。


慌てて避けようとする私の腰を先輩が包囲した。


挙動不審な私のおでこに唇が触れた。


私は目を見開いた。


そのすきをつくように先輩が唇にそっと触れた。


「...仕返しってことで。」


今までに味わったことのない昂り(たかぶり)を感じた。


好きな人からされるものはこんなにも幸せなのか。


膝から崩れ落ちそうになる私を先輩が抱きとめた。


胸いっぱいの好きが零れそうだ。


私は自ら先輩の胸元に埋まった。


温かい筋が私の頬を伝う。


先輩を見上げると目が合った。


私の涙を先輩の指の腹が優しくなぞる。


私はゆっくりと踵(かかと)を地面から離した。


本当の『好き』に言葉はいらない。



【終】

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