初恋シリーズ
幸せなはずなのに辛くなる。


「遼介はお姉さんのこと...。」


好きの一言が言えない。


冷たい風が吹いた。


まだ緑の葉がついている木々がざわめく。


「姉ちゃんとは姉弟、それだけだよ。」


察しがついた澤田がおどけながら言った。


きっと今までに何度も言われてきたのだろう。


どんな気持ちで隠し続けてきたのか私には一生理解できない。


「あと俺の姉ちゃん結婚するんだよね。」


澤田が乾いた笑い声を上げた。


それを聞いてチャンスだと思っている自分がいた。


私は自分の思考の汚さを軽蔑した。


「ごめん。」


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