初恋シリーズ
無言のままそのままの体勢でいると彼が肩に首をのっけてきた。


ここまで甘えてきたことは今までにない。


押し返すことも答えることもできず、私はされるがままを通した。


彼が肩から離れるとすぐに目が合った。


彼の手がゆっくりと非常階段の手すりの方へ近付いてくる。


鉄の柵が私の背中に当たって冷たい。


彼が私の耳の横らへんの柵を掴んだ。


膝立ちになって私を見下ろしている。


いまいち状況の掴めていない私は取り敢えず三角座りをして

一定の距離を保った。


「えっと?」


半笑い気味に発した言葉を彼は聞こえていないふりをする。


こころなしか目があっていない気がする。


「やっぱり着けてないんじゃん。」


私は頭が真っ白になった。


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