初恋シリーズ
笑いながら私のことをベッドへ引っ張る。


「今日は祝日ですよ、柳さん。」


すっかり忘れて着ていた制服をあっさりと脱がされてしまった。


私は布団の中で靴下をもぞもぞと脱いだ。





夕方頃に先生と別れて2日ぶりに家へ帰った。


予想通り母親は家にいなかった。


無造作に置かれた一万円札5枚を貯金箱にすべて突っ込んだ。


置き手紙さえない冷めた家庭に未練なんてひとつもない。


リュックから先生の匂いが染み込んでいる制服を引っ張り出して

それを抱きしめて私は眠りについた。


数学の授業で教団の上に先生が立っている。


この教室の中で私以外先生の必死な顔を知らないと思うと

頬が緩みそうになる。


数学は苦手だけど早く終わらせれば小テストの間誰にも邪魔されず

見つめていられるからいつも予習と復習をかかせない。


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