初恋シリーズ
のそのそと起き上がる私の背中を支える。


他の先生がいる保健室では何もできない。


「すいません、最近寝不足で。」


「今日はもう帰った方がいいよ。担任の先生には言っておくから。

僕の授業で倒れるなんてほんとびっくりしたんだからね。」


他の先生の死角になっているポケットから家の鍵を取り出した。


それをそっと私の手に握らすと先生は他の先生に挨拶をして出て行った。


早退届けを手に持った担任が教室に飛び込んできた。


汗がびっしょりでさっきまで体育の授業をしていたのがわかる。


「ゆっくり休みなさい。これ、谷先生から預かった。勉強もいいが

体は労りなさい。」


そう言って渡されたのは満点の数学の小テストの束だった。


軽く会釈をして私は教室を出た。


愛想のない奴と思いたければ思えばいい。


私を見ようとしてくれる人なんて先生ぐらいしかいない。


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