初恋シリーズ
だけどそんなことはできない。


近くて遠いとはまさにこの事だと思う。


「うはー冷てえ。」


生徒会室のある棟から二つ先の棟に職員室がある。


真ん中の棟の周りを走り抜け、もう一つ先の渡り廊下に着いた。


先輩が濡れた顔を手のひらで拭っている。


「頭に積もってんぞー。」


見上げる私の頭を先輩が撫でた。


背伸びをすれば届く距離。


けれど目の前の先輩の優しい顔が私を留めた。


一瞬やましい気持ちを持ったせいで自己嫌悪に陥った。


私は俯いて眉間にシワを寄せた。


「...やめときゃよかったか。」


先輩が後悔が混じった低い声で呟いた。


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