初恋泥棒


昼休み。


用事があるからと、先に行くよう頼まれた私は、席取りの為駆け足で学食へ向かう。


中庭を抜けて、学食のある校舎まであと少し、という所で。



...あれって。



見覚えのあるシルエットに余所見をした瞬間。


どんっ!!


「わっぷ!」



前を歩いていた男子生徒に思い切りぶつかってしまった。



「うわっ、びっくりした」

「す、すいません!」



見たことない、ってゆうかまだほとんどの人の顔見たことないんだけど。

雰囲気からして、上級生だろうか。

耳に光るピアス。明るい茶髪。着崩された身なり。


少し、怖い...。



「かっわいーね。1年生?」

「す、すいませんでした」


顔を覗き込まれる。

すり抜けて交わそうとすれば、腕を掴まれて動きを止められてしまった。


「いーじゃん。逃げないでよ」

「は、離してください」


掴まれた腕が痛くて怖い。


怖い...。

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