初恋泥棒
好きさえ言えずに
「見て見てー!おっきな橋ー!!」
社会見学の日、私達は京都に来ていた。
風情のある綺麗な景色にはしゃぎまわる弥生ちゃん。
「うるせーぞ弥生!」
「なによー、ついて来ないでよ佑(ゆう)!」
なんの縁か、一緒になった班の中にいたメンバーの一人が弥生ちゃんの幼馴染だったらしい。
田中 佑くん。
元気でクラスのムードメーカー的な存在の彼は、来る途中のバスの中でもひときわ目立っていた気がする。
なんでも弥生ちゃんは、そんな田中くんのうるさすぎるところが嫌なんだとか。
「弥生ちゃん、田中くん、置いて行かないでー」
どんどんと先に行ってしまう2人。
私から見ると、仲が良くて楽しそうにしか見えない。
写真係りに任命された私としては、もう少しペースを落としてもらえるとありがたいのだけれど。
「あ、あの建物キレイ」
と、カメラを覗きシャッターを押そうとした時、何かにつまずいて、フレームの中の景色がぐらりと揺れた。
「ここ、砂利道だから気をつけて」
「あ、ありがとう」