初恋泥棒


「あ、見て!坂下くん。まだ桜が咲いてる」


大きな桜の木を見つけて近づいてみる。

近くで見ると、さらに大きくて、とても立派な木だった。



「枝垂桜だね」

「しだれ桜?」



そうなんだ。

言われてみれば、木の枝が垂れ下がっているようにも見える。



「きれい...」


思わず見とれて、無意識にシャッターを押していた。


すると、スッと手からカメラが奪われて。



奪い取る手の行く先を見れば、パシャリとシャッター音が鳴った。



「今、と、撮ったの?!」

「うん。記念に」

「い、いきなりだなんて酷い!」



私、絶対ブサイクな顔してた...!



「大丈夫、大丈夫。キレイに撮れてるから」

「嘘だ!消去するから返して」

「えー、もったいない」



カメラの奪い合いが始まる。

そんな時。



「おー、サク」


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