小さな手のひら
「…で、あの」
「……何ですか?」
(何で泣いたの、なんて聞いたらまた泣かしちゃうかもなぁ)
「…ハンカチ、ちゃんと返したので…それじゃ、」
あたしはちゃんと目も合わせずに、そのまま踵を返した。
少しして、気がつく。
「……なんで着いてきてるんですか」
「へ?あ、」
振り返ればやっぱり、蒼眼少年が居た。
大きい瞳で見上げられて少しドキッとしたけど、その時はよくわからなくて。
少年は少し目を伏せてから、また見上げる。
「…名前、知りたいと思って」
(声かければいいのに、)
「…伊吹憐、高校1年です」
つい癖で学年も行ってしまった。
蒼眼少年は大きい目をさらに大きくして、あたしの名前を復唱する。
「…伊吹憐、さんですか?」
「はい、」
「俺、淡海蓮(あわみ れん)っていうんです」
(…え、え?)