小さな手のひら
そう、咲良には一コ上の彼氏が居る。
付き合いだして確か…もうすぐ、2年になるのか。
(そりゃ、羨ましいっちゃ羨ましいけど)
あたしは何故か、恋愛関係になるとかなり鈍感らしい。
特に意識してる訳じゃないけど、…あたしには果たして、恋愛経験はあるんだろうか。
過去のことを思い出そうとすると、さかのぼっていくにつれてもやもやになって…頭痛が酷くなる。
そういうのを咲良は全部知ってるから、無理して思い出さなくても良いと言ってくれた。
だから咲良も、昔のことを話題に出したりしない。
…。
(そういうとこが、確かに優しいかもしれない)
「で?その蒼眼少年、なんていう名前なの?」
机に突っ伏していたあたしの顔を、咲良は覗き込んだ。
「えー?…と、淡海蓮って名前」
「―――――淡海蓮?」
咲良の表情が変わる。
動揺したかのように瞳が左右に揺れた。
「…何、咲良知ってんの?」
「いや…違う、けど。……」
(…?)
丁度、授業始まりのチャイムが鳴る。
咲良は曇った表情のまま、自分の席へ向かった。
向かいながら小さく呟いた咲良を、あたしは気づけずに居て。