小さな手のひら
それから、咲良は蓮のことを聞かなくなった。
ただ一回だけ、
「その淡海って子、髪は金髪だった?」
と聞いて、蓮の話題は最後になった。
その日の、帰り道。
(…お、居た)
あたしの視線の先は、大きく手を振っている小さい黒髪受験生。
手を振り返せば、嬉しそうに顔を緩ませた。
(あぁ、綿あめ笑顔だ)
あの笑顔にあたしは果てしなく、心を癒されている。
なんであんなに可愛いんだよ、罪な少年…!
「ごめん、待った?」
「いえ、全然待ってません!俺も今来たんです」
「ホント?良かったー!てか、敬語辞めてってば」
には、とはにかむと少年…蓮も笑い返してくれた。
(昨日、この公園で学校帰りに会う約束しちゃったんだよね)
それからは、学校がある日は毎日公園に通うようになった。
だんだん夏に近づいてくるにつれて、たまに差し入れを持っていくようにもなって。
二人で同じコンビニで、同じものを買おうとした時は笑いが止まらなかった。