夏の嵐と笑わない向日葵
「ニャー!!」
何故かノラは、嵐君に向かって威嚇してる。
なんで??
今まで、そんな事なかったのに……。
「ノラ、お前の気持ちは分かるけどな、これだけは譲れねーからな!」
「ニャー、ニャー!」
ノラと会話が成立している嵐君。
あたしは1匹と1人を交互に見つめる。
「いーじゃん、ノラは向日葵と毎日一緒に寝てんだろ?」
「ニャー!」
一体、なんの話をしてるの??
でも、嵐君がノラに一生懸命に話しかけるのを見ていたら、何故か笑いが込み上げる。
……どうしよう、もう限界。
「ノラ、今度は俺に…」
「ぷっ……あははっ」
あたしはついに、吹き出して笑ってしまった。
「っ!!」
「ふふっ、もう、何の話してるの?」
笑いながら嵐君を見ると、嵐君は驚いたようにあたしを見つめた。そして…。
「向日葵っ…」
切迫つまったような声が、耳元で聞こえる。嵐君との距離が縮まった。
バタッ
後ろにた折れ込む瞬間、夜空に浮かぶ月に、見慣れた金髪が重なった。そして、気づいた時には、嵐君に押し倒されていた。
そして、唇に感じる、嵐君の体温。
嵐君に押し倒されるようにされた口づけに、あたしは驚きと嬉しさで身動きがとれなくなる。
「………っ」
「んっ!?」
唇の隙間から少し漏れる吐息の音さえ聞こえる静けさ。
ほんのり、線香花火の火薬の匂いがした。
たぶん、あたしと嵐君の浴衣に染み込んだのだろう。