夏の嵐と笑わない向日葵
「こんな子忘れて、あたしにしなよ、嵐」
愛美さんの言葉が、あたしの思考をどんどんネガティブにしていく。
”あたしなんか”、そんな言葉ばかりが頭をぐるぐると回るのだ。
「ずっと一緒になんていられないじゃない」
あぁ……。 なんだろう、暑さのせいなのか、それとももう、何も考えたくないからなのか、頭がボーッとしてきた。
「向日葵ちゃん、大丈……」
遠くに、啓君の声が聞こえた。
何も考えたくない、聞きたくない。
そんなあたしの願いが叶ったのか、キィーンと、耳鳴りがした。
「おい!向日葵!!」
ガバッ
体が前に傾いた途端、誰かが強く抱きとめてくれた。それに、ホッとするような、悲しいような、複雑な気持ちで身を任せる。
これは……嵐君だ。
嵐君、あたしは……どうしたら良かったんだろう。
恋なんてしなければ、こんなに苦しむ事も無かった?
ううん、嵐君と出会わなければ、こんな感情を抱く事も無かったかもしれない。
意識を失うまでの時間、あたしはそんな事を考えていた。