夏の嵐と笑わない向日葵
「ん………」
重い瞼をゆっくりと持ち上げる。
一番最初に目に入ったのは、見慣れた畳と、ノラの耳だ。
ここは……あたしの部屋だ。
いつの間に、ここで眠ったんだろう。
回らない頭と、けだるい体を動かそうとしたが、体が誰かに抱きしめられている事に気づく。
「起きたのか…?」
声の主は嵐君だ。
もぞもぞと動くあたしに気づいたのだろう、掠れるような低い声で、声をかけてきた。
部屋の襖の隙間から見える月明かりに、今が夜なのだと知る。あたしはどうやら、夜まで寝こけてしまったらしい。
そう、門で倒れたあの時から。
あんな暑い炎天下の下、勝俣君と長話してしまったのも原因だろう。
「嵐君……起こしちゃった?」
あの喧嘩別れは、夢だったんじゃないかって言うくらい、いつもの日常だった。
「今、寝れそうだったんだけどな…起きてて良かった」
「どうして……?」
いつものように、抱きしめられて眠る。
ぎこちなさもない、たわいもない話をする事ができていた。