夏の嵐と笑わない向日葵


「向日葵の……声が聞けたから」


そう言った嵐君の表情は見えない。
ただ、後ろから抱き締める腕に、力がこもったのが分かった。


「あたしも……」


今目覚める事が出来て良かった。


そうでなきゃ、この穏やかな時間が、朝が来た途端に消えて無くなってしまいそうだったから。


「嵐君の声が……聞きたかった」


他の誰でもなく、あたしを呼ぶ声、あたしだけを見つめる瞳を望ぞんでた。


それで、嫌でも思い出す。
あの時、愛美さんに言われた言葉。


あたしに、嵐君を好きになる資格がないって事。


これが、嫉妬なのかな。


こんなに苦しくて、誰にもとられたくないって……綺麗でいたいと思うのに、そういられない程に歪む心。


なのに、あたしは前に踏み出せずにいる。
愛美さんに取られたくないと思うなら、奪い返せばいい。


なのに、あたしは……嵐君以外にある大切なモノを捨てる事は出来ない。


愛美さんは、それが出来るのに。












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