夏の嵐と笑わない向日葵
「そ、それから……ね。何もかも捨てて、嵐君の所へ行けたらって思ったりもしたんだ」
あたしは、一番伝える事が怖かった事を勇気を振り絞って伝える。
「だけど……ここでの高校生活もあるし、おばあちゃんの残した家、両親の思い出のある畑もある…それを全て捨てて、嵐君の傍に所へ行く事は出来ない……」
「向日葵……」
あたしはクルリと体の向きを変えて、嵐君の顔を真っ直ぐに見つめた。
不安で揺れ動く嵐君の瞳とぶつかった。
「それでも……嵐君の1番でいたいって……思ってもいいですか?」
「そ、そんなん……」
嵐君は驚きと照れで何度も口をパクパクさせてあたしを見つめる。そして、1つ深呼吸をする。
「あたりめーだし、俺の1番は、向日葵しかいねーよ!」
「そ、そっか……嬉しい」
こんなに嬉しいのは、心が通じているから。
こんなに、満たされているのは、一方通行でない想いだからだろう。