夏の嵐と笑わない向日葵
「離れる事になっても、俺がまた向日葵に会いに行く」
頬に、嵐君の手が触れた。
そして、ゆっくりと顎の方へと流れ、クイッと持ち上げられる。
「嵐君……」
「好きだ、頭がおかしくなりそうなくれぇーに…」
吐息が唇を掠めたと思った瞬間、嵐君の温もりが、あたしのソレと重なった。
いつか来る別れ。
触れたいけど触れられない寂しさ。
離れた場所で、相手がどんな風に過ごして、自分以外の誰と過ごしているのかの不安。
物理的な距離が、あたしと嵐君の心を離してしまったら……そう思うと怖かった。
あたしもだよ。
嵐君の事を考えると、好きすぎて、冷静になれないし、嫉妬もするし、頭がおかしくなりそうなりそう。
こうやって触れあう今も、満たされながら、不安と隣り合わせだ。
「好き……」
「あぁ、俺も向日葵が好きだ……っ」
何度もかける好きの言葉と、重ねる度に深くなるキス。
あたし達は、不安だったんだと思う。
どんなに触れても、好きの言葉を重ねても、相手が好きすぎて、全てを知りたい、手に入れたいって思うから。
このまま、触れた場所から2人解け合って1つになってしまえばいいのに……。
そう思っても、出来ない事は分かってる。
だからあたし達は、胸に切なさを抱きながら、寄り添い、長い夜が開けていった。