夏の嵐と笑わない向日葵
そして、別れの時。
あたしと嵐君は皆を門の外で見送る事になった。
「そんじゃー、お前ら早く帰れ」
嵐君の冷たくて、別れも惜しまない一言で、皆の顔がげんなりとする。
「あんなー、もっとあるだろ!!」
「まぁ、学校で会うしね」
「たもっちゃんも冷てぇーなぁ!」
啓君とたもっちゃんがコントのような会話をする中、愛美があたしの前に歩いてくる。
「向日葵、東京へ遊びに来なよ。そん時は、あたしが案内してあげる」
「ありがとう、愛美。……これ、良かったらお弁当」
あたしは、帰り道で食べる3人分のお弁当が入った風呂敷を手渡す。
「風呂敷……向日葵あんた、本当に現代人!?」
「う、うん?変かな……?」
驚いている愛美に首をかしげるあたし。
それを遠巻きに見ている男の子達は、さらにあたし達を驚いた顔で見つめていた。
「お、お前らいつの間に仲良くなったんだ??」
「敵に塩を送る??」
「向日葵パワーだろ!やっぱ俺の好きな女だわ!」
啓君、たもっちゃん、嵐君はそれぞれ勝手な反応をする。そんな皆に、あたしと愛美は顔を見合わせて笑った。
「秘密、教えてあげないし。ね、向日葵?」
「うん、秘密だね。愛美」
そう言って笑っていると、嬉しそうな嵐君と目が合う。
そんな嵐君に、笑みを返した。
「ありがとう、嵐君」
色々な意味を込めて。
あたしの知らない所で、たくさんあたしを守ってくれてた事、本当にありがとう。
すると、嵐君はあたしにピースサインをした。
良かったな、やったな!そんな意味が込められたサインに、あたしはまた笑顔を浮かべた。
また、こんな風に皆に会いたい。
そう思えた時間だった。