夏の嵐と笑わない向日葵
チーン
仏壇の前に正座をして、鐘を鳴らし、あたしは遺影の中で優しく笑うおばあちゃんに向き合う。
「ちゃんと会いにいけなくてごめんなさい」
でも、御盆だけは、この家におばあちゃんが帰ってきてくれる、そんな気がして、いつも一人分多い食事を作って食卓に並べた。
「こうして、話すのは久し振りだね」
今は、あたしが少し変われた近況報告をしようと思う。
嵐君と出会ってからの話だ。
「好きな人が、出来たよ。あたしに、また笑う事を思い出させてくれた人」
もし、嵐君と出会ってなかったら…今、こうしてたとえ仏壇でも、おばあちゃんに話しかける事は出来なかったと思う。
「おばあちゃんが引き合わせてくれたんだね」
おばあちゃんが託した手紙が、あたしと嵐君を、繋いでくれた。いつだって優しくて、あたしを守ってくれた。
「あの時は、失うばっかりで、心が死んでしまってたと思う。それでも、見捨てずに傍にいてくれて、本当にありがとう」
病気になっても、傍にいてくれた。
最後の時間まで、あたしに使ってくれた。
「でもね……今は、知ったからこそ怖いものが出来たみたい」
それは、嵐君と離れる事だ。
やっと通じ合えたのに、すぐに別れの時は来てしまう。
「嵐君がいなくなってからの生活が……想像できないんだ」
ふとした瞬間に、嵐君の残像が見えて、気づいたらいつだってその姿を探してる。
こんな状態で、あたしは嵐君と離れられるの?