夏の嵐と笑わない向日葵
「嵐君……」
不安でどうしようもないよ。
お願いだから、早く笑顔を見せて。
強引でも良いから、「向日葵」って名前呼んで、この手を掴んで、あたしをどこまでも一緒に連れていってほしい。
傘の取っ手を握る手に、力が入る。
そして、泣きながら俯いた。
すると、どこからか、ピチャンッ、ピチャンッと水を踏み弾けたような音が聞こえてきた。
「っ!!」
弾けるように顔を上げると、傘も指さずに走ってくる、嵐君が見えた。
「向日葵!?んでそんな所に居んだよー!!」
門の前で待つあたしに驚きながら、駆けてくる嵐君に、あたしは手から傘を落とし、雨も気にせずに駆け寄る。
「っ!!」
「向日葵、どうしたよ!?」
たまらず抱きつくあたしに、嵐君は驚いていたけれど、強く抱き留めてくれた。
「良かった……良かったっ…」
嵐君の体温だ。
良かった、嵐君はちゃんとここにいる。
嵐君はあたしの顔を上げさせ、あたしの顔を見た瞬間、目を見開く。
安堵したからか、さらに流れる涙であたしの顔はぐちゃぐちゃだった。