夏の嵐と笑わない向日葵
家に入り、お風呂や夕ご飯を済ませたあたし達は、また縁側で2人涼んでいる。
「あー、疲れた。腰が痛てぇ…」
「ふふっ、嵐君、なんだかおじいちゃんみたい」
縁側に大の字で寝る嵐君を、隣に座りながら見下ろす。すると、嵐君はあたしの顔を見て満足げに頷いた。
「なに……?」
首を傾げると、嵐君は小さく笑った。
そして、あたしの長い三つ編みに触れ、少し引っ張る。
「俺が、向日葵に初めて会ったときに言った事、覚えてるか?」
嵐君と初めて会ったときに言った事……?
『夏休みの間、ここで一緒に暮らす。そんで、向日葵の事、めちゃくちゃ笑わせてやるよ』
『え……?』
『こんな、悲しそうな顔ばっかじゃ、ダメだ。向日葵は笑顔が似合うんだからよ!』
頭の中で、あの日の記憶が甦る。
そして、それを思い出して、あたしは自然と口角が上がる。
「思い出したみてーだな」
あたしの顔を見た嵐君が、嬉しそうに笑った。