夏の嵐と笑わない向日葵
「あれ……誕生日?」
「ピンポーン!そんな大事な日、もう2度と忘れさせねーから」
そう言って、嵐君は掴んでいたあたしの右手を持ち上げて、目の前に見せる。
「こ……れ………」
あたしの右手の薬指には、シルバーに光るリングがはめられていた。
よく見ると、リングには向日葵の彫刻が刻まれている。形は少しボコボコと歪んでいる、不思議なデザインだ。
「俺が作ったから、形がキマッてないと思うけどさ、俺からの誕生日プレゼントっていうか……」
あたしの手は離さずに、嵐君は少し照れ臭そうに空いている方の手で前髪を弄る。
嵐君、照れ臭い時は、前髪を弄るのが癖なのかな。
また新しい発見をしたなって、嬉しくなった。
「俺と、お揃いにした。遠くにいても、俺たちはずっと繋がってるって意味でな」
嵐君……。
遠くにいても、ずっと繋がってる。
不安でたまらなかったのは、嵐君も同じで、どうにかして、繋ぎ止めたくて……。
「彫刻だけどな、俺たちにとって特別な向日葵の花を贈りたかったんだ」
こんなに、愛を感じる贈り物がある?
「こんなに嬉しい贈り物は生まれて初めてもらった…」
驚きと喜びに感極まって、ポロポロと涙が溢れてくる。最近分かった事だけど、あたしは存外涙もろいらしい。
嬉しくて、悲しくて、寂しくて、好きすぎて涙が枯れることなく湧いては流れる。