夏の嵐と笑わない向日葵


どんな宝石や高価な洋服をもらってもきっと泣けない。


嵐君が手作りで作ってくれたこの指輪だからこそ、こんなに嬉しい。



「今日は、コレの為に出掛けてたんだ、心配かけて悪かった。不安にさせたな」


頭をワシャワシャと撫でられる。


まるで、子供をあやすような仕草に、あたしは嵐君の前では甘えてばかりのような気がしてならない。


「向日葵が生まれてきてくれたから、俺は今こうしてこの世界で一番大好きな人の傍にいれんだ」


「あたし……自分の誕生日なんてずっと忘れてた」



こんなに、生まれてきた事を祝ってもらえる日なんだ。


そういえば、お母さんとお父さんが亡くなるまでは、こんな風に誕生日を祝ってもらってたな。


あんなに幸せな思いで、どうして忘れちゃってたんだろう。


「俺にとってももう大切な日だからな。これからは絶対忘れさせねー、毎年生まれてきて良かったって叫びたくなるくらい祝うぞ、俺は」


「ふふっ、叫びたくなるくらいなんだ」


あぁ、不思議。
嵐君は、人を喜ばせて、笑顔にする天才だ。


いつからだろう、こんな風に声に出して笑えるようになったの。笑えなかった頃の自分が嘘みたい。
























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