夏の嵐と笑わない向日葵
「あたし、贈り物は悲しみを残すだけだと思ってたの」
ジャラン…
あたしは首からかけた2つのシルバーリングを取り出して、両手に乗せ、嵐君に見せる。
「それは?」
「これは、両親の結婚指輪で……2人の形見」
不思議そうな嵐君に、説明すると、嵐君は一瞬息をのんだのが分かった。
だけど、あたしは首を横に振り、笑みを浮かべる。
「それで、あの向日葵畑はおばあちゃんの形見だった。あたしの大切な人達は、こんなモノを残して、傍にいてくれない」
そう、あの時は何度もそれで悲しみに暮れた。見るたびに失った物の大きさを知り、絶望した。
「この指輪を見て、あの向日葵畑の世話をする度に、もうこの世界にはいないんだって泣いた」
「向日葵……」
でも、嵐君からもらった向日葵の彫刻の指輪を見て思う。
「でも……こんな風に、贈り物は、誰かの想いを、愛を残していてくれるんだね……」
あまりの悲しみに、見えなくなっていた。
本当は、傍にいれない代わりに、大切な人へ残す愛情だったのに。