夏の嵐と笑わない向日葵
「向日葵と過ごした時間は、いつもの時間に追われる毎日とはかけ離れてて、ちょっと異世界に来たみたいだったな」
「そういえば、船で来たら冒険みたいでわくわくしたって、言ってたね」
そう言うと、嵐君は「よく覚えてたな!」と言って笑った。
あたしも、嵐君みたいに色んなモノに興味をもって、視野を広げたい。
『何がしてーのか分からねぇーのは、世界がどんだけ広いのかを知らねーからじゃね?』
あの日、2人で海へ行った日に、そう言った嵐君の横顔がキラキラしていたのを思い出す。希望に、夢に溢れている顔だ。
「あの時の嵐君を見てて、あたしまでわくわくした。いつか、あたしも東京へ行きたいって思ったよ」
「高校卒業したら遊びに来いよ、東京」
東京に行く。
今までのあたしには、無かった選択肢だった。
だけど……。
「今度は……あたしから嵐君に会いに行く」
もっと強く、前を向けるように、大人になったら……。
嵐君が、あたしに会いに来てくれたみたいに、今度はあたしから嵐君に会いに行きたい。